このたび神奈川大学日本常民文化研究所では、神奈川大学大学院歴史民俗史料学研究科と合同で、被災資料救出プロジェクトとして、宮城県気仙沼市の大島漁業協同組合資料の保全を行うことになりました。
5月13日から31日までのあいだに、神奈川大学日本常民文化研究所所員・職員と大学院生が6班体制で順次作業を進めていく予定です。

気仙沼湾にうかぶ大島の漁業協同組合は、1903年大島村漁業組合として設立され、現在は宮城県漁業協同組合気仙沼地区支所大島出張所として2003年に100周年を迎えた歴史のある漁協です。
漁協ではそれを記念して『大島漁業組合百年史』が纏められ、その際に収集整理された明治以来の関係資料がきちんと整理保存されていました。
専用の書架に収められたそれらの資料に「大島漁業組合資料文庫」の看板が掛けられたのは、地震が来る1週間前のことだといいます。

4月の終わりに伺った際、2階建ての事務所は建物そのものは無事でしたが、ガラスはすべて割れ、ロッカーが倒れ、書類や備品が散乱した大変な状況でした。それでも組合員の方により毎日少しずつかたずけられていたため、私たちも簡単に足を踏み入れることができました。
1階の事務所ではさまざまな現用書類が水浸しになった状態で床に山積みされており、2階の書架にあった明治以来の資料は幸い山側に書架があったため1階ほどの被害はないようでしたが、やはりすっかり水浸しの状態でした。

このようななか漁協の方たちは大島の漁業復興のために奔走する本当にお忙しい毎日で、とても資料の整理にまで手が回らないということでしたので、わたくしたち神奈川大学日本常民文化研究所がその保全整理をお手伝いすることにしたものです。

津波による海水や汚泥に浸かった資料は、できるだけよい状態で救出したいと考えておりますが、実際の作業にはさまざまな課題があると思われます。わたしたち研究所もさまざまな資料整理に携わってまいりましたが、海水に浸かった資料を扱うのは初めての経験になります。

そこで今回は、その毎日の試進捗状況を「気仙沼 資料保全の記録」として発信することを試みることにいたしました。試行錯誤の現状を広く見ていただくことで、多くの方々のお知恵を拝借したいと考えたからです。
もちろん、事前に様々な情報は「宮城歴史資料保全ネットワークhttp://www.miyagi-shiryounet.org/01/siryou/rescue01_komonjyo02.html」や「歴史資料ネットワークhttp://www.lit.kobe-u.ac.jp/~macchan/suison-siryo.htm」などから得ておりますが、近代現代史料が主体であることから「和紙、毛筆」の史料とは異なった問題があると思われます。
みなさまの知識をお寄せ下さいますよう、お願い申しあげます。


神奈川大学日本常民文化研究所
所長 佐野賢治